はじめに ― 癒しのその先へ
多くの人は「癒されたい」と願います。
けれど、癒しは終わりではなく、次の始まりです。
それは、静けさの中から再び生命が動き出すための「ゼロ点」。
氣功では、癒しとは生命の流れ(氣)の再調整であり、
その静けさを土台に、次の創造の流れが自然に芽吹いていくと考えます。
陰陽消長 ― 癒しと再生の循環
氣功における癒しのプロセスは、「陰陽消長(いんようしょうちょう)」の運動です。
すべての癒し(陰)は、次の行動や創造(陽)を生むためにあります。
“陰が極まると陽が生じる”。
静寂に至ったのちは、その静寂を土台として再び生命が動き出す。
これが「太極(動静一如)」の運動です。
癒し=エネルギーの再調整であり、「在ること」に還るプロセス。
そこに留まると再び氣が滞ります。
だからこそ、癒しは「再生への入口」なのです。
浄化から再生へ ― 空と有のリズム
癒しにおける「浄化」と「再生」は、
タオ(道)の循環、すなわち「生成消滅」のリズムを象徴します。
浄化は“空(くう)”への回帰。
再生は“有(ゆう)”の創造。
仏教でいう「空有不二」――空(無)と有(現象)は二つで一つ、という真理です。
癒しによって「空」になり、その空から新しい「有」が咲く。
この循環は、人生そのもののリズムでもあります。
神経科学から見た癒しと創造
心理学や神経科学の観点から見ても、
「癒し」は神経系の再調整=恒常性の回復です。
過剰な緊張(交感神経優位)や無気力(副交感神経過多)の状態を、
「安全」と「静けさ」を感じることで再び統合します。
ヒーリングによる安心感は、迷走神経系を通じて身体の恒常性を整え、
“静けさの中で光が芽吹く”体験を生み出します。
さらに、癒しが進むと脳の防御反応が緩み、
前頭前野と島皮質が再び活性化。
これらは自己認識と内受容感覚を司る領域であり、
「自分で選択し、創造する力」が回復する瞬間です。
これは神経可塑性(Neuroplasticity)による新しい意識回路の形成であり、
氣功が導く“再生”そのものです。
情報空間の観点から見る氣の働き
氣を「情報の流れ」として理解するなら、
癒し=情報のノイズを除去し、
再生=新しい秩序(パターン)を創発するプロセスといえます。
物理学的には、
- 浄化=エントロピーの減少(秩序化)
- 再生=情報の創発(エマージェンス)
この二つがセットで働くとき、情報空間の中で「創造」が実際に起こります。
氣功とは、まさにこの情報秩序の再編成を体験する技法なのです。
結論 ― 創造へと続く癒し
癒しとは、氣の流れを止めず、
内なる秩序が再び“創造”へ向かう自然の循環そのもの。
静けさは終点ではなく、生命が再び動き出すためのゼロ点。
そこに意志と意識が結びつくとき、
人は「癒す人」から「創造する存在」へと変わります。
癒しを超えて、創造へ。
氣功の本質は「癒すこと」ではなく、
生命を再び創造の流れに戻すことにあります。
静けさの中から光が芽吹く感覚を、
ぜひ身体で体験してみてください。
馬明香(ま あすか)
氣功師、ヒーラー、セラピスト
認知科学をベースとしたヒーリングと中国の伝統気功を用いて、病人を辞めて、本来の自分の生き方に立ち返り自己実現を目指す生き方を追求している。
本当になりたい自分を実現し生きることこそ、病気を治すことの唯一の道であり、どんな状況にあっても自分の価値を探求しながら人生を生きることが人の本当の幸せであることを信じて活動している。
「道タオ」に通じる気功的な生き方、すなわち、頑張らず無理せず、自然体であれば、自ずと自分が持っている本来の魅力や能力が発揮され、健康に豊かに幸せに生きられるはず。
人生のパフォーマンスを最高に高めていくための一つの道具として氣功を提案している。