気功について

陰と陽とは何か──氣功哲学から読み解く存在の原理

2025年10月2日

無極から太極、そして陰陽へ

古代中国の宇宙論では、すべての存在は「無極(むきょく)」から始まるとされます。

無極とは、形も区別もなく、ただ静寂と可能性のみを宿す虚空の状態。

 

そこに微かなゆらぎが生じ、「太極(たいきょく)」が生まれます。

太極とは、静から動への萌芽。宇宙が呼吸を始める第一の瞬間です。

 

やがてこの太極が「陰」と「陽」という二つの氣に分かれることで、現象世界が顕れました。

光と闇、内と外、主体と客体──すべての対比は、この陰陽の分離から生まれています。

 

つまり、陰陽の分離こそが宇宙の顕現の原理であり、森羅万象を成り立たせる根本法則なのです。

 

陰陽の本質:分離と相対性

私たちが「個」として存在するためには、他との分離が欠かせません。

分離があるからこそ「私は私である」と感じることができるのです。

 

この世界のすべての概念は、比較や対比によってのみ成り立っています。

光を知るためには闇が必要であり、喜びを知るには悲しみを通る必要がある。

それが「陰陽表裏一体」という構造です。

 

矛盾や分離の中でこそ、私たちは存在を実感し、体験を得ることができる。

それが、この現象世界の本質なのです。

 

陰陽の四つの基本性質

陰陽をより深く理解するためには、古来より伝わる「四つの基本性質」を知ることが欠かせません。

これらは、氣功の学びの中でも繰り返し現れる普遍的な原理です。

① 対立(たいりつ)

陰と陽は真逆の関係にあります。

明と暗、吉と凶、善と悪、損と得、表と裏──。

対立があることで世界は二極の張力を持ち、そこに動きが生まれます。

② 互根(ごこん)

陰と陽は独立せず、互いに依存し合っています。

冷たいがあるから熱いがわかる。小さいがあるから大きいがわかる。

相手があるから自分が成り立つ──これが相対性の本質です。

③ 消長(しょうちょう)

陰と陽は量的に増減しながらバランスを取り合っています。

昼が長くなれば夜が短くなる。活動が増えれば休息が減る。

増減の中にこそ、生命を保つリズムがあります。

④ 転化(てんか)

陰と陽は質的に変化し、やがて入れ替わります。

夜が極まれば朝が訪れ陽に転じ、夏の盛りはやがて秋に移り陰が強まる。

「陰極まれば陽に、陽極まれば陰に」──この循環のダイナミズムが、すべての命を動かしています。

 

氣功における陰陽の学び

氣功は、この陰陽の理を頭で理解するのではなく、身体を通して体験する学びです。

  • 呼吸:吸う(陰)と吐く(陽)の往復
  • 丹田:安定(陰)と活力(陽)の源
  • 小周天:任脈(陰)と督脈(陽)の循環

これらの実践を通じて、陰陽の調和が氣の流れを円滑にし、生命のリズムを整えることを体感的に理解していきます。

 

陰陽統合と存在の哲学

陰と陽は、どちらか一方だけでは成立しません。

相互作用の中で新しい創造が生まれます。

 

休息と活動、受容と挑戦、静けさと動き──

それらを排除せず、調和させることで生命は豊かに展開していくのです。

 

陰陽の智慧とは、単なる「中庸」ではありません。

揺らぎながらも全体として調和し続ける、動的な均衡です。

これは氣功実践の核心であり、同時に存在そのものの哲学でもあります。

 

まとめ:氣功を学ぶうえでの陰陽論

陰と陽の分離と統合は、宇宙と生命を貫く根本原理。

それは、氣功を通して体験する「存在の真実」そのものです。

 

氣功のあらゆる技法──呼吸・動作・意識──は、この陰陽のリズムを基盤としています。

陰陽を理解することは、修練に軸を与え、迷いなく歩みを深めるための羅針盤となるでしょう。

 

あなたの内側では、いま「陰」と「陽」のどちらが強く働いていますか?

その揺らぎに耳を澄ませること──そこから氣功の道は始まります。

 


知識としての陰陽から、体験としての陰陽へ──氣功師養成講座で共に歩みを深めていきましょう。

 

 

 

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