序章:ありがとうと言えない自分を、責めなくて大丈夫
私たちは誰でも、素直に「ありがとう」と言えない日があります。
- 心が追いつかない
- わだかまりがある
- 言葉にすると嘘になる気がする
- 感情が複雑で素直になれない
そんな自分を「ダメだ」と責めたくなる瞬間もあるでしょう。
けれど氣功の世界では、“感謝できない”という状態も、すでに感謝の一部 とみなします。
陰陽の世界では、表に出ない感謝=深く沈んだ感謝。
ありがとうと言えないあなたは、感謝が欠けているのではなく、まだ陰の中で眠っている「ありがとう」 を大切に抱いているだけです。
いつか自然に陽へ返るその日まで、静かにしていて大丈夫です。
その陰は、いずれ必ず陽へとひっくり返ります。
自然に、無理なく。
まずは、そのことをお伝えしたいと思います。
第1章:宇宙の最初の衝動は“感謝”だったという伝承
かつて、あるシャーマンの方からこんなことを教えてもらいました。
「宇宙が生まれた最初の衝動は、感謝だった」
これは美しい神話的な響きを持ちながら、多くの思想や宇宙観と不思議なほど一致します。
- タオ:満ちたものが自然に溢れる
- インド哲学:創造は歓喜(アーナンダ)から生まれる
- 西洋神秘学:存在の肯定が光を生む
- 宇宙論:ビッグバンは“臨界の飽和点”から爆発的に拡張する
どの伝統も、宇宙を生んだ力は “不足” ではなく “満ちる” エネルギーだと言います。
感謝とは、まさに満ちている意識が自然に溢れたときの波。
もし本当に宇宙の最初の衝動が「感謝」だったのだとしたら、私たちが感謝を感じる瞬間は、宇宙の源の呼吸と調和していると言えるのかもしれません。
第2章:陰陽論から見る「ありがとうと言えない」の本当の意味
陰陽は常にペアです。
- 愛の裏には痛みがある
- 拒絶の裏には願いがある
- 言えない裏には、深い「ありがとう」がある
だから、感謝できないときは“感謝がない”のではなく、
感謝がまだ陰に潜り、形になる準備をしている段階。
陰が深ければ深いほど、あとで返ってくる陽は大きい。
ありがとうと言えない自分は、実は「ありがとう」を育てている最中なのです。
「ありがとうと言えなかった自分」を嫌だと感じていたその瞬間こそ、実はすでに“感謝の胎動”が始まっていたのです。
第3章:ありがとうは観照の道具であり、ヒーリングであり、場の調律
感謝には、三つの大きな働きがあります。
① 観照の道具(ジャッジを手放し、ただ観る力)
心がざわついて「言えない」とき、心の奥でそっとつぶやく“ありがとう”。
素直に口にできなくても、心の中なら言える、ということはあるかもしれません。
これは、今のありのままの自分をそのまま観照するための小さな光となります。
感謝できないという感情を変えようとせず、ただその奥に静かに触れる行為。
これで十分なのです。
② ヒーリングの技法(氣の循環が完了する)
ありがとうは、“受ける(陰)”と“返す(陽)”を一瞬で同時に起こします。
そのため、氣の循環がその瞬間に完成します。
「ありがとう」と言うことは、最もやわらかく、優雅に氣を流すヒーリングそのものなのです。
③ 場の調律(場の周波数を中点へ戻す)
感謝の周波数は“中点”と呼べるものです。
陰にも陽にも偏らない、静かな中心。
たとえ場がざわついていても、誰か一人が心の中でそっと「ありがとう」と唱えるだけで、場全体が“整う方向”へ引き戻されます。
ありがとうは、最も静かな場の浄化と調律をこす言葉です。
第4章:受け取る/与える ― 生命の陰陽循環
陰=受け取る
陽=与える
これは生命の基本構造であり、呼吸と同じです。
吸えば(陰)自然に吐きたくなる(陽)。
受け取れば(陰)自然に与えたくなる(陽)。
陰陽の動きは宇宙の摂理であり、循環そのもの。
吐く息は必ず吸う息に転じ、受け取れば与えることになります。
循環しているとき、人は穏やかで、温かい氣で満たされています。
第5章:奪う/奪われる構造が、人の自由を奪ってきた
現代社会に深く根づいた価値観があります。
- 見返りはきっちり
- 損はできない
- 無償は怪しい
- 多く持つ人が強い
- 多ければ多いほどいい
- どう儲けるかが重要
これらは一見合理的で、“賢く生きるための戦略”のように見えますが、根底には 奪う/奪われる の世界観が流れています。
奪う世界では、
- 受け取ることが怖い(受け取らないことで奪われることかあ自分を守る)
- 与えることが負担になる
- 比較と競争が絶えない
- 常に不安と不足がつきまとう
そしてこの世界では、自然さが失われていきます。
成功して見える人も、どこかで自然な陰(受容)が失われ、もっと多くを得なければ、という果てしない“陽の偏り”の中で心が枯れていきます。
この仕組み自体に馴染めず、傷つき、生きづらさを抱える人もこの時代は少なくありません。
でもそれは弱さではありません。
むしろ、本来の生命の循環をよく知っている敏感な心を持っている証です。
第6章:奪い合いには循環がなく、循環のない場所は必ず枯れる
奪う/奪われるの構造には、氣の往復がありません。
- 奪う → 戻ってこない
- 奪われる → 閉じる
- 与える → 減る
- 受け取る → 罪悪感
氣は動かず、生命エネルギーは枯れます。
だからいま、社会全体がゆっくりと疲れ切り、氣が不足しはじめているのです。
これは“人のせい”ではなく、循環が壊れた構造の限界なのです。
第7章:ありがとうは、奪う構造を静かに終わらせる言葉です
「ありがとう」と言う言葉は、
- 受け取ります(陰)
- そして祝福します(陽)
を同時に起こします。
だから、ありがとうが心から発せられる瞬間、奪う/奪われるの関係は消え、循環の世界が立ち上がります。
ありがとうは、
最も小さな、そして深い祈りであり、今この時代に私たちが起こせる、最もやわらかい革命です。
第8章:疲れているあなたへ ― もう奪わなくていい。もう守らなくていい。
奪う世界では、誰もが少しずつ疲れていきます。
与えすぎた人も、
受け取れなかった人も、
奪われてきた人も、
奪わないと生きられなかった人も。
あなたが疲れたのは、弱いからではありません。
循環しない世界に、心が傷ついただけです。
無理に与えようとしないでも大丈夫。
無理に受け取ろうともしなくて大丈夫。
ただ今日、心がふっと緩んだ瞬間に小さく「ありがとう」と心の中でつぶやいてみてください。
その一言が、あなたの内側に陰陽の循環を呼び戻し、
奪う世界ではなく、循環する世界の住人であることを思い出させてくれます。
それは、あなたの人生だけではなく、社会全体の氣を静かに満たしていくやさしい始まりでもあります。
おわりに ありがとうと言えないあなたへ ― 小さな祝福のメッセージ
最後に、このコラムを読んでくださったあなたへ、小さな祝福のメッセージをお伝えしたいと思います。
ありがとうと言えないあなたは、優しさが足りないのではありません。
むしろ、感謝が深すぎて、まだ言葉になる準備が整っていないだけなのです。
感謝は“善い行い”ではなく、氣の自然な動きです。
無理に言葉にしなくて構いません。
出てこないときは、そのままで大丈夫です。
なぜなら、感謝はすでに、いつもあなたの中にあるから。
心の奥、誰にも聞こえない声でふと
「……ありがとう」と呟くその小さな響きは、宇宙の最初の衝動と同じ周波数を持っています。
声よりも深く、言葉よりも静かに、あなた自身とあなたの周りを調和へと戻していきます。
どうかその力を信じてください。
🌕 関連コラム ― 言霊が現実を動かすとき
「ありがとう」は、ただの言葉ではありません。
その言霊は、陰陽の偏りをフラットにし、
心の葛藤をそっとほどく“氣の働き”を持っています。
宇宙の最初の衝動が「感謝」だったのなら、
私たちが口にする「ありがとう」は、
その原初の調和を呼び覚ます行為なのかもしれません。
▸ ありがとうの氣 ― 言葉が世界を整える理由
(言霊・陰陽・脳科学の視点から)
馬明香(ま あすか)
氣功師、ヒーラー、セラピスト
認知科学をベースとしたヒーリングと中国の伝統気功を用いて、病人を辞めて、本来の自分の生き方に立ち返り自己実現を目指す生き方を追求している。
本当になりたい自分を実現し生きることこそ、病気を治すことの唯一の道であり、どんな状況にあっても自分の価値を探求しながら人生を生きることが人の本当の幸せであることを信じて活動している。
「道タオ」に通じる気功的な生き方、すなわち、頑張らず無理せず、自然体であれば、自ずと自分が持っている本来の魅力や能力が発揮され、健康に豊かに幸せに生きられるはず。
人生のパフォーマンスを最高に高めていくための一つの道具として氣功を提案している。