身体の伴わない情報空間の書き換えはない
三和氣功では「共感覚による内部表現の書き換え」という定義をもとに氣功を学び扱っていますが、それは情報の書き換えということです。
いうまでもなく認知科学や脳科学という観点から解釈するとそうなります。
この解釈が現代における氣功にとって適切であり、非常に有益なのは、私たちが取り扱うものが「情報」であると設定している点です。
これまでの人類の自己存在のリアリティは、自分は自分の外側に広がる現実という世界に閉じ込められているというものでした。
ところが、「内部表現」という概念を理解することで、実は自分の今見ている現実世界は自分の内側であるという認識のシフトを起こすことが可能になります。
外側であると思っていた世界は実は自分の内側だった。
太陽や、遠く離れた星の光は、実は自分の内側にあったということです。
私たちは自分たちの意識によって、それぞれがこの世界を作り上げている。
よって、世界創造の本質は私たちの意識、つまりいかなる情報を私たちが意識するかによって左右されるということがわかります。
こうなったら、自分の外側にあってちっぽけな自分の力ではどうにも変えようがないと思われていたこの世界は、実は思っていたより簡単に変えることができそうだということがわかります。
ですから、パソコンの表の画面を作っている裏側の情報を書き換えるように、私たちの「表」である顕在化した現実、すなわち性格や能力やパフォーマンス、環境、人間関係なども、裏側である潜在意識を書き換えれば自動的に変わってしまうというわけです。
情報が物理に先行し、情報が物理を生み出すのです。
このことからわかるように、この世界のすべては、自分自身も含めてあらゆるものの本質は情報であるという知識が、「情報空間の書き換え」の前提として必要です。
ただし、人間がコンピューターのようにボタン一つでおいそれと変化できないのは、人間が物理的な存在だからです。
つまり、肉体を持つ存在であるということ。
人間の本質は情報であるのと同じくらい、人間とは肉体的な物理的な存在であることを忘れてはいけません。
よって、人間の肉体的な側面を無視した情報空間の書き換えはうまくいかないわけです。
生存のための自己防衛プログラムと情動
肉体があるということは、そこに肉体の生命を維持し保存するためのプログラムが絶対的に機能しているということです。
他の動物と同様に人間には本能として生命を維持し、種を存続させるというプログラムが働いています。
安全に生き残るためのプログラムです。
そしてこのプログラムにとって重要な役割を果たしているのが「情動」です。
体感を伴う強い感情の動きによって、私たちは安全か否か、生き残れるかどうかの判断材料としています。
身体の領域において、自分の生存を脅かすようなことに対しては、私たちは不安や恐れを自動的に感じるし、同時に心拍数や血圧が上がるなどの身体反応が起こります。
そしてこれは単に物理的な生存にかかわること(食うか食われるか、やるかやられるか)のみではなく情報空間においても同様に機能しています。
人間の場合は、心と生理的な反応が不可分であり、心理的ショックと身体的ショックは地続きのもの、一つのものとして体験されます。
例えばそれが物理的に傷つけられるのではなく精神的に追い詰められるような体験であっても、必ず生理的な反応が伴っているわけです。
情報的な領域における自分の安全と維持も我々にとっては生命機能に直結していて、自分が傷つくことや死は絶対に避けなければならない危機としてプログラムされています。
この情報的領域における自分の生き残りのプログラムを「自我(エゴ)」と言います。
情報領域を書き換えるということは、その人の自我、「私はこのような人間である」という無意識における自己認識とそれに基づいたプログラムを書き換えることであり、それは生命反応さえ引き起こすほどのインパクトを持ちうるということでもあります。
そして自我を書き換えるということは、すなわち象徴的には自我を破壊して再生するような意味があるので、実は「自我」にとってはそれは「危険」として認識されます。
つまり、古い自我が壊されるとき、多かれ少なかれ、我々は心理的および身体的危機反応を体験することになります。
それが情報を書き換える際のリスクです。
いわゆる「ブロック」とは、自我(エゴ)の防衛機能によって身体領域に起きる反応のパターン化です。
自分を守るために、自動的に心理的または身体的な反応がパターン化されているのでいつも同じことを繰り返すし、そのパターンを崩そうとすると圧倒的な抵抗反応が起きてしまうのでなかなかそのパターンから自由になれない、それがブロックです。
ブロックとは強烈に情報空間/内部表現に書き込まれているものなので、それをいじって消すということは自我にとってはかなり危険の伴うことになります。
だからこそ、強い抵抗が起きます。
例えばそれは、痛みや気持ち悪さ、心拍数の上昇などといった主に身体反応として体験されるかもしれませんし、強い不安や動揺、混乱、引きこもりといった精神的な危機として体験されるかもしれません。
いずれにしても、そうなったときにどう対処するのかという策がなければ、かなりリスキーです。
生体にはホメオスタシスという現状維持機能が備わっており、無理やりに「現状の自我」を変えようとすれば必ずホメオスタシスが抵抗するからです。
ダイエットで短期間に5キロも10キロも体重を落とすという方法をうたっているものがありますが、そのような劇的な変化がまさに生体にとっては「生命の危機」として体験されるので、たとえ劇的な変化が起きたとしても、必ずリバウンドするのはそのためです。
情報の書き換えにおいても、急激で劇的な変化を起こそうとすれば必ず身体反応を伴った抵抗が起きますし、失敗するでしょう。
「脳」を中心に考えれば、心と身体が不可分であることは明白なので、情報空間を書き換えれば、必ず身体的なフィードバックが取れるということを前提にしておく必要があり、受け手の身体反応をきちんと拾っていくことも大事な作業です。
多くの場合、ブロックやトラウマには強い情動体験が結びついているので、そこに触れた際に出てくる身体反応を処理していくことが最もシンプルなヒーリングであり、書き換えとなります。
また本人がそのブロックやトラウマを手放す準備ができていない場合もあり、その場合にはやはり無理強いはしないことも大事です。
結局、他人が何をしてもしなくても、自分を制限していた古い自我のプログラムを手放す準備が本人の中で整えば、自然とブロックやトラウマは癒されるのです。
情報空間を「変える」という概念は機能しにくい
ここまでをまとめると、内部表現における情報の書き換えがコンピューターのようにボタン一つで実際にはうまくいかないように感じるのは、物理的な身体に「自我」という防衛プログラムが働いているからです。
このため、変化に対して自動的に変化しまいとする反応が起きてしまう。
これが情報空間の書き換えのリスクや難しさです。
たとえば術者が良心から強制的に内部表現を書き換えたとしても、それは相手にとっては結局新たなる洗脳にすぎず、根本的な救いや癒しにはつながりません。
変える、治すという意図には抵抗が起きやすいのです。
そこで、我々が採用するとよい姿勢は簡単に言うと「許可」という態度です。
消えてもいいし、消えなくてもいい、変わってもいいし変わらなくてもいい、これが情報空間や内部表現を書き換える際にとるべき我々の態度であると、三和氣功は考えています。
「変える」という方向性の裏には、必ず、変えないとまずいという前提(陰)があり、この方がいいという手に入っていない何らかの理想(陽)があるわけです。
これではポジティブかネガティブかそのいずれかを手に入れようとしていることと同じです。
その陰陽のシーソーゲームの中にいるうちは、ネガティブは反転してポジティブにもなりますが、ポジティブは必ずネガティブにも転じるものです。
そんなゲームの外に出てしまう、それが「許可」するという態度になります。
自分や相手に許可を与える位置に自分がいることが、抵抗を避け、古い自我を手放すという自発的で自然な変化や進化を促すポイントとなるのです。
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気功師、ヒーラー、セラピスト
認知科学をベースとしたヒーリングと中国の伝統気功を用いて、病人を辞めて、本来の自分の生き方に立ち返り自己実現を目指す生き方を追求している。
本当になりたい自分を実現し生きることこそ、病気を治すことの唯一の道であり、どんな状況にあっても自分の価値を探求しながら人生を生きることが人の本当の幸せであることを信じて活動している。
「道タオ」に通じる気功的な生き方、すなわち、頑張らず無理せず、自然体であれば、自ずと自分が持っている本来の魅力や能力が発揮され、健康に豊かに幸せに生きられるはず。
人生のパフォーマンスを最高に高めていくための一つの道具として氣功を提案している。