心と気功

人はどのようにして「自分」に還っていたのか

戻る場所は、どこにあったのか

自然体に戻れないのは、
努力や意識の問題ではなく、
戻るための構造が日常から失われているから。

このコラム
なぜ、気づくとまた緊張に戻ってしまうのか
では、
そのことを見てきました。

では、本来、人は
どのようにして自分に戻っていたのでしょうか。

答えは意外にシンプルです。

戻ろうとする必要がなかった。
ただ、戻れてしまう環境の中で生きていただけ。

 

自然に戻れる「場」は特別なものではなかった

昔の人が特別に悟っていたわけでも、
意識が高かったわけでもありません。

日常の中に、

  • 役に立っていなくても排除されない時間
  • 何も生み出していない状態
  • ただ一緒にいるだけで成立する関係
  • 評価も結果も求められない場

が、当たり前に存在していました。

それは「癒しの場所」ではなく、
生活の一部だった。

だから、

緊張しても
疲れても
意識が外に向いても

戻ろうとしなくても、
自然に還流が起きていた。

そこでは、
人の生活や人生は
今よりも、もっと自然だったのです。
 

自然に戻れる「場」とは「何が起きるか」ではなく「何が起きなくていいか」

自然に戻れる「場」とは、
何かを起こす空間のことではありません。

むしろ逆です。

  • 何かを達成しなくていい
  • 正しくいなくていい
  • 変わらなくていい
  • 役割を果たさなくていい
  • ただそのままでいい

そうした前提が壊れない空間

この条件が整うと、
身体ははじめて警戒を解きます。

言葉で安心させなくても、
説明しなくても、

場そのものが「安全だ」と伝えている

この場の中では、
身体は緊張する必要がありません。

 

なぜ一人では戻りにくいのか

「自分一人で整えられるようになりたい」
そう思う人は、とても多い。

でも、
それが難しいのには理由があります。

人の神経系は、
もともと単体で完結するようには
設計されていません。

呼吸も、
緊張も、
安心も、

他者との関係性の中で調整される

人は、他者との関係性の中で生きているものだからです。

誰かと一緒にいるとき、
何も起きていなくても、

  • 見張られていない
  • 評価されていない
  • 役割を果たしていなくていい

そう感じられるだけで、
身体は静かに緩み始めます。

これが、
自然体に戻るには「場」が必要な理由です。

これは依存ではなく、
生理的、神経的な仕組みです。

 

子どもは「言葉」ではなく「場」で存在承認を学ぶ

本来、
自己肯定感や存在承認は、
教えられるものではありません。

子どもは、

  • 何もしていないとき
  • 役に立っていないとき
  • 失敗してもしなくても
  • ただそこにいるとき

でも、
場から追い出されない経験を通して、

「生きていていい」
という感覚を身体に刻んでいきます。

これは教育やしつけではなく、
家庭や社会の
環境による学習

 

いまの社会には、その条件がほとんどない

現代社会では、

  • できること
  • 成果
  • 空気を読む力
  • 迷惑をかけない態度

が、非常に早い段階から求められます。

子どもが、無条件に安全でいられるはずの家庭でさえ、

  • 余裕がなく
  • 不安が多く
  • 正しさが優先されやすい

親が悪いわけでも、
愛が足りないわけでもありません。

親自身が、
ありのままでいていい場を
失ったまま生きている

だから、
子どもにそれを手渡すことが難しくなっている。

 

回復のない疲弊と、親子関係の問題

この構造の中では、

  • 常に自分や周りを監視する
  • 常に緊張が残る
  • 休んでも回復しない
  • 自己肯定感が育たない
  • 親子関係がこじれやすい

こうした問題が、
個人の努力とは無関係に増えていきます。

誰かを責める話ではありません。

回復できる場が、
社会にも家庭にも
ほとんど存在していない

それだけのことです。

 

氣功が「場」を重視する理由

氣功が扱ってきたことの本質は、
何かを変える方法や何かを起こす方法ではありません。

自然に還ることのできる条件です。

評価されず、
何かを起こさず、
できていなくても失敗にならない。

ありのままが受け入れられる場の中で、
身体が「戻っていい」と学習する。

それが、
氣功という実践の核にあります。

 

では、
なぜ評価や確認が入ると、
身体はこれほど簡単に固まってしまうのでしょうか。

このコラムでは、
その理由を
脳神経系と身体の仕組みから
もう少し具体的に見ていきます。

体が固まる理由―なかなか楽にならないメカニズムについて

 

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