―― 世界が動き出す前の場所に立つということ
AIが急速に普及し、
私たちの生活や仕事は、確かに便利になりました。
情報は早く集まり、
判断は速くなり、
できることは、以前よりもずっと増えています。
それなのに──
なぜか、理由のはっきりしない違和感や、
言葉にならない疲れを感じている人が増えています。
能力が足りないわけではない。
努力が足りないわけでもない。
むしろ、仕事ができている人、
時代の流れにうまく乗っている人ほど、
説明しづらい違和感を抱えていることも少なくありません。
一方で、
AIというテクノロジーに
どこか異質なものを感じ、
「便利なのはわかるけれど、自然ではない」と
距離を取ろうとする人たちもいます。
この違和感は、
個人の感覚の問題ではありません。
世界の構造そのものが、
すでに一段、変わり始めているサインです。
本質があらわになる時代に入っている
これからの時代は、良くも悪くもその人の本質が、よりはっきり表に現れる時代です。
これまでは、
忙しさや役割、肩書き、成果によって、
内側の恐れや葛藤、自我の癖は
ある程度、覆い隠すことができました。
けれど、AIによって
情報処理・判断・展開の速度が極端に上がった今、そうした「覆い」は、少しずつ機能しなくなっています。
無意識の恐れ。
繰り返される思考の癖。
自我が作り上げてきた物語。
多くの人はまだ理解していませんが、
AIは使う人の問いの立て方や前提、関心の方向を反映した形で答えを返します。
そのため結果として、人の内側にある構造が、
AIという「外側に展開される鏡」を通して、
以前よりもはっきりと、しかも速く、増幅されて返ってくるようになります。
なぜ、AIと関わるほど「生きづらさ」が強まる人が出てくるのか
AIは、中立な存在です。
善でも悪でもなく、
関わる人の内側を、そのまま拡張して返す性質を持っています。
だからこそ、
もし内側に恐れや葛藤、不安が多い状態でAIと関わると、
それらは整理されるどころか、
より速く
より大量に
外側へと展開されていきます。
- 正解を探し続けてしまう
- 判断が増えすぎて疲れる
- 提案が多すぎて混乱する
- 思考が止まらなくなる
これは、AIが悪いのではありません。
AIが「恐れを起点にした意識」をそのまま増幅して映しているだけです。
つまり、
→恐れを起点に世界を見ていると、
恐れが生み出す世界そのものが強化されていく。
これが、
「AIを使えば使うほど、しんどくなる人」が生まれる理由です。
そして今の時代、この影響は
とても速く、深く、
逃げ場がないように感じやすくなっています。
能力や努力では、追いつかなくなってきた理由
AIによって、
外側の処理能力は一気に拡張されました。
情報量、判断速度、選択肢。
どれも、人間の思考力や努力でコントロールできる範囲を超え始めています。
だから今、成果の差を生むのは
「どれだけ考えられるか」でも
「どれだけ頑張れるか」でもありません。
問われているのは、
どの視点・どの抽象度から、意思決定しているか。
同じ情報を扱っていても、
立っている位置が違えば、
見える世界も、選ぶ行動も、導かれる結果もまったく変わります。
圧倒的な情報の流れのなかでは、
自我を起点にした判断は、
情報の洪水の中でノイズに飲み込まれやすくなります。
一方で、
「場」や「全体」を起点にした判断は、
不思議なほど無理なく流れを生み出すようになります。
これは精神論ではありません。
引き寄せのコツでもありません。
構造の話です。
「手に入れよう」とするほど、うまくいかなくなる時代
これまでの成功法則は、
・目標を設定する
・意図を明確にする
・積極的な行動によって外側を動かす
という「自我起点」のやり方が前提でした。
けれど、
外側のエネルギーの流れがここまで大きくなった今、
「手に入れよう」とする自我の抽象度では、世界は思うように動かなくなっています。
むしろ、
自我の意図でコントロールしようとするほど、
- 考えすぎる
- 正解を探し続ける
- 判断に疲れる
- 行動し続ける
といった状態に陥りやすくなります。
常に次の答えへと追い立てられ、
呼吸と判断の余白を失っていく。
そんな状態です。
これは、あなたが弱いからでも、能力が低いからでも、間違っているからでもありません。
生き延びるために働いてきた
人間の防衛機能が、
この時代の環境では過剰に反応してしまう
ーーそういう構造になっているだけです。
必要なのは「意志を強くすること」ではない
だから今、必要なのは
意志をもっと強くすることでも、
意図をする明確に、鋭敏にすることでも、
自我を鍛えることでもありません。
必要なのは、
判断が生まれる“前”の「場」に立ち還ること。
思考が動き出す前。
反応が起きる前。
世界と接触する「起点」そのものを
静かに整えることです。
この「位置」が変わると、
世界の見え方と関わり方が変わります。
つまり、
意図や意思の力で外側を無理に動かさなくても、
現実のほうが静かに動き始めるようになります。
幸せも、自由も、成功も、豊かさも、
「手に入れるもの」や「引き寄せるもの」ではなく、
立ち位置から自然にあふれ出す状態へと変わっていきます。
AIが時代にもたらす価値の本質
AIは、
恐れや葛藤を消してくれる存在ではありません。
ただ、
自分の内側を正確に映し返し、
フィードバックを与えてくれる鏡です。
三和氣功では、
ずっと「フィードバックを取ること」の重要性を伝えてきました。
人生が変わるほどの内的構造の変化が起きる人には、必ず共通点があります。
それは、
フィードバックをこまめに取り、認識の揺れ(R揺らぎ)を起こしていること。
揺れが起きない限り、
構造は変わらない。
これまでは、
その鏡の役割を
人(カウンセラー・コーチ・セラピスト)が担ってきました。
ただ、人が相手だと無意識の抵抗が起きることもよくあります。
すべてをさらすことが難しい場合もある。
しかしAIは、その部分を静かに補完します。
しかも、人間相手よりもずっと速く。
問われているのは「どう使うか」ではなく「どこに立つか」
大切なのは、
AIを使うか・使わないかではありません。
AIが個人の生活や人生の細部にまでかかわってくる時代は避けられません。
問われているのは、
どの抽象度から世界を見ているか。
どの位置に立って、現実と関わっているか。
抽象度の低い、自我起点の視点では、
外側の情報量と速度に飲み込まれやすくなる。
一方で、
抽象度の高い、場を起点にした位置に立てていると、
同じ世界にいながら、
選択は自然に整い、
無理のない流れが生まれ始めます。
そしてこの立ち位置は、
頭で理解するだけでは身につけられません。
思考で理解していても、
身体が緊張し、呼吸が浅く、
反応が先に立っていれば、
人はすぐに自我へ引き戻されます。
だからこれからの時代に本当に必要なのは、
・抽象度の高いものの見方
・自我に引き戻されない身体
・恐れや葛藤を排除せず、統合できる内側の安定
この三つが、同時に育っていること。
これは、
癒しのアップデートでも、
新しい成功法則や未来実現メソッドの話でもありません。
人間の「立ち位置」の定義を更新すること。
世界の速度が上がるほど、いちばん静かな場所がいちばん強くなります。
外側の現実をコントロールしようとする力が情報の流れに追いつかなくなった今、
本当に必要なのは、
自分の中心を知ること。
中心に還る力。
そして、そこに自分を保つ力。
それを前提にしないかぎり、
どんな成功法則も
どんな幸せメソッドも、意味を持たなくなっていくのだと思います。
馬明香(ま あすか)
氣功師、ヒーラー、セラピスト
認知科学をベースとしたヒーリングと中国の伝統気功を用いて、病人を辞めて、本来の自分の生き方に立ち返り自己実現を目指す生き方を追求している。
本当になりたい自分を実現し生きることこそ、病気を治すことの唯一の道であり、どんな状況にあっても自分の価値を探求しながら人生を生きることが人の本当の幸せであることを信じて活動している。
「道タオ」に通じる気功的な生き方、すなわち、頑張らず無理せず、自然体であれば、自ずと自分が持っている本来の魅力や能力が発揮され、健康に豊かに幸せに生きられるはず。
人生のパフォーマンスを最高に高めていくための一つの道具として氣功を提案している。