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気功を十分に活用したければ、「スピリチュアル」を脱却すればうまくいく

2020年5月11日

「スピリチュアル」への期待と違和感

気功は、長らくスピリチュアルとして語られてきたと思います。

もともと、内丹を養って不老不死を目指すための秘伝の修行法であった「仙道」と関わりが深く、精神的な世界や目に見えない心の世界に深く踏み込んで修行を行う技術として気功は受け継がれてきたからです。

実際に、そのような物理を越えた世界に踏み込んでいくことは、私たちの心と身体に強いインパクトを与えます。だからこそ、数千年という時間を越えてなお、現代でも受け継がれているのです。

気功を志す人、気功に関心を持たれる方の多くは、このような、現代にまで残ってきた気功の「不思議」な力や世界観に惹かれて、ご興味を持つのだと思います。

何か、今の自分にはないスゴイパワーが身につくのではないかと期待させるものが気功にはあります。

病院では何も異常がないと言われる自分の症状をなんとか気功で治すことは出来ないだろうか。医者には治らないと言われた病気をなんとか気功で改善できないだろうか。

気功をやってみたらもっと元気になれるだろうか。気功をやればもっと強い身体になれるだろうか。

気功を学べば心の迷いや弱さを超越することが出来るだろうか。心の安寧を得られるだろうか。 人を癒やせるようになるだろうか。

その動機は様々でも、気功を学んで「気」を使えるようになれば、自分の抱えている問題が解決できるのではないか、自分の感じている限界を超えることが出来るのではないかと考えるわけですね。

私ももちろんそうでした。気功を学んでセラピストとしての能力を上げたかったし、自分の健康レベルも上げたくて、気功を始めました。

でも一方で、気功に興味を持ちつつも、今一歩で躊躇してしまう人もいらっしゃいます。それは、気功に付随している「不思議」な世界観に違和感や気持ちの悪さや漠然とした不安を感じてしまうからではないでしょうか。

なぜかはわからないけど、どうもあやしい。怖い感じがする。
気功を受けに行って、知らない間に洗脳されたり、なにか宗教的なことに巻き込まれたりしないだろうか。
気功のようなことが本当に自分にも出来るようになるのだろうか。

そういった感覚は、私には良く理解が出来ます。それは私自身が気功をやりながら一方で感じ続けてきた違和感と同じだからです。

気功とは何か、気とは何か、モヤモヤとしていてよく分からないのに、懸念も疑いもなくその世界に足を踏み入れることなど、一般的な感覚をお持ちの方であれば出来ないのが普通だと思います。

スピリチュアルの限界と危険性

気功は「気」を扱うので、気功と言います。気功の世界に足を踏み入れると、どうしても「気」とはなにかという点に向き合わないといけなくなります。自分が扱うものが何かについてある程度認識が出来ないと、人間はそれを扱うことが出来ないからです。

そして「気」とは何かということを、長らくスピリチュアルの文脈の中で私たちは理解しようとしてきました。

気とはなにか。
それについて様々な解説を見かけます。
万物をつくり出す生命エネルギー、宇宙からもたらされるエネルギー、根源的エネルギー、波動、神の力、高次元の力…

そのどれもが分かるようでよく分からない。誰もが同じ認識や理解に到達するものではなく、その解釈が人それぞれになってしまう、漠然とした手触りの概念ばかりです。

こういう世界観を私はスピリチュアルと言っています。

つまり、気功とは○○であるというような誰にも理解と再現が可能な明確な定義がなく、それを扱う人の知性や価値観、主観に依存する世界観です。

スピリチュアルでは、目に見えない領域を扱うわけですが、そこであつかうものが何かはっきり分からないので、「神」や「精霊」、「高次の存在」のような人間の限界を超越した存在や力を登場させないとつじつまが合わなくなるのです。

それが悪いと言っているのではありません。

ただ、その世界の中だけでものを観てしまうと、何か自分の理解を超えた現象が起きたときに、人間の理解や限界をこえた力や存在によってそれを認識するために、「特別性」とか、「絶対性」、「優越性」などが大きな意味を持ってしまうのです。

例えばヒーリングして病気が治ったことを、神の奇跡だといえるのがスピリチュアルの世界です。天使にヒーリングしてもらう、○○の神の力を借りて邪気を浄化する、修行をして神の力を手に入れる… というようなことがリアルな世界がスピリチュアルの世界です。

この世界の中では、スピリチュアルな存在が本当に存在しています。神、精霊、天使、高次の存在… 何でも良いのですが、そのような存在がリアルな世界では、人間には常に「限界」があり、「不可能」なことがあり、スピリチュアルな存在達の力に「絶対性」や「優位性」が付加されていて、その力を扱える人やその存在を呼び出せる人に「特別性」や「優位性」がうまれ、自分に無理なことはそうした存在や、それを扱える人(ヒーラー)に頼るという「依存性」や「信仰」や「崇拝」を生みます。

そうすると、人間は自力で何も解決できないと思ってしまうし、力は与えられるものだし、そうした力を手にした場合には、自分は選ばれたものであり、優位であるという錯覚が生まれるし、スピリチュアルな存在や能力を自分より上位に位置づけることで、それに対して自動的に盲目になります。「なんか分からないけど、天使のお告げだから、そうなんだ」って無条件に受け入れてしまうのですね。

神や高次元の力やそのような力を扱える人が示したことに無自覚に縛られてしまうということです。スピリチュアルな存在や力がでてきたら、そこで思考が停止してしまうわけです。そこでは科学とか論理といったものが全く否定されてしまうのです。「科学では説明できないから」といってそれ以上の思考をやめるのです。

自分を超越した存在や力、絶対性を自分の世界に存在させると、そこに「死角」が生まれてしまうのです。スピリチュアルな力や存在に盲目的になってしまうのですね。

自分の精神性や身体性をそういったスピリチュアルな世界の中に置いてしまうと、自動的に情報空間における完全なる自由を失います。自分の意志よりスピリチュアルな存在の意志が優先され、どんなに自分を高めてもそれ以上は上に行けないという上限をつくり出してしまうのです。

結局そのように自分より上位の存在や力をリアルに信じてしまうと、霊能者やヒーラーに言われた言葉に縛られたり、それが自分にとって機能するのかしないのかを吟味して選択する自主的な能力を奪われたり、本当に自分が望んでいることさえ自分の外にいる上位の存在に伺いを立てて決めるというオカルティックな世界にはまり込む危険性をはらんでいます。

これがスピリチュアルのもつ限界であり、危険性です。

スピリチュアルの世界の中からは、気とは何か、気功とは何かということを誰にでも理解可能な形で客観的に提示することは出来ないのです。

科学的な言葉で気功を扱うから、誰でも気功ができるようになる

気功はスピリチュアルではありません。少なくとも私があなたにお伝えしたい気功はスピリチュアルではあってはならないと思っています。

科学が絶対だというわけではありません。科学で説明の出来ないこともよく分かっていないこともこの世界には沢山あります。

そして、スピリチュアルがダメだとか悪いと言っているのでもありません。

でも、スピリチュアルな世界の中から気功を扱えば先に述べたようなリスクと限界があります。

そうではなくてスピリチュアルな世界の外に出て、その世界観を利用することで、気功をもっと機能的に扱えるようにしたいのです。

そのためにはどうしても科学的な視点で気功を理解することが必要になります。「科学的」ということは、誰でも同じ理解と結果が得られるような、再現性のある言葉を使ってそれを扱うということです。

たとえば、同じ手順を踏めば誰でも同じ実験ができて同じ実験結果が得られるというように、方法を学び理屈を理解して、練習をすれば誰でも出来るようになる「技術」として気功を扱うということです。

スピリチュアルに傾倒している人の中には科学や論理性に対して否定的な人もいますが、むしろ、科学と論理的な思考でスピリチュアルを捉える方がスピリチュアルな世界への理解や能力は高まります。

人間は、それについて多角的な知識を得て理解が深まるほど、その対象を扱う能力が上がるからです。それが何かが分からないジャングルの奥地の原住民にスマートフォンを渡しても使えないように、私たちは知らないものは扱えないのです。

その原住民の世界では、現代人はスマートフォンを自分だけ持っていれば誰でも神になれますよね?でも、スマートフォンの使い方を教育すれば原住民だって誰でもスマートフォンが使えるようになります。

気功やスピリチュアルを一つの技術として捉えるということは、天使や神の住む世界から一歩外に出て、その存在や概念を「使う」とか「利用する」という感覚です。そのためには「不思議」とか「神秘的」とか「人知を越えた」」という言葉だけで捉えずに、天使や神という概念について、出来るだけ客観的に捉え、学ぶことです。

気功を科学的に理解するために、目の前のリンゴであれ、天使であれ、気であれ、神であれ、ドラゴンであれ、それらはすべて「脳」が認知している概念であり、世界であり、イメージであるという考え方を私は採用しています。

私たちの体験はすべて、脳の情報処理によってつくり出されているということですね。

その脳科学的、認知科学的な観点を採用して気功を捉えると、気功は情報操作のスキルであるということが分かります。

私たちの体験は、情報の集合で出来ています。リンゴの匂い、リンゴの色、リンゴの歯触り、リンゴの重さ、リンゴの味、リンゴという概念の意味、リンゴにまつわる記憶… 今私が目の前にあるリンゴを手にとって食べる時に、五感や言語や記憶などが情報として脳で処理されています。

私がリンゴの香りを甘酸っぱいと感じるのは、リンゴの香りが甘酸っぱいからではなく、脳が嗅覚の神経から入ってきた電気刺激を処理した結果として甘酸っぱさを感じているのです。

同じように、気を感じるという体験も、五感や言語や記憶などの情報を脳が処理することで生まれています。

目の前に天使が現れたとしても、それもやはり脳の情報処理の結果として体験しているものです。

そのように科学的な視点を採用すると、私たちは「気」やスピリチュアルな世界を出来るだけ客観的に捉えることができ、誰もが理解できるような説明が可能になります。そして客観性、再現性があるからこそ、それは特別な力でも何でもなく、誰にでも扱える技術になるのです。

自分が何を扱っているのか、自分がやっていることが何かが分かれば、もっと上手にもっと沢山の機能を利用できるようになります。

5歳の子どもがスマートフォンをつかうのと、スマートフォンの制作に関わっている大人とでは自ずと使いこなし方に差が出てきますね。

気功も、どんな知識を持って、どれくらい高い視点であつかうかで、その使いこなし方、精度に圧倒的な差が出てくるのです。

気功とは情報を扱う技術のこと

認知科学では、この世界は情報で出来ている、と考えます。「私」という一人の人間も情報の集合体です。遺伝情報から、その人の信念や価値観に至るまで、すべて情報です。

ですから、現象に注目するのではなく、情報に注目して、情報を書き換えることが出来れば現象が変わるというのが、気功の考え方です。

現実の中に自分が存在するのではなく、自分の脳内現象として現実があるのです。

ですから、脳にインプットされている情報そのものにアクセスして変化を起こせば、アウトプットである現実が変わってしまうのです。

その情報の書き換えに必要なのが「気」の感覚、気を感じる感覚です。気を感じている時、そこには「気」という物理的なものはありません。でも、身体の感覚としてはしっかり感覚を感じています。

本来は、何か物理的なものに触れることで触覚が刺激されて「触っている」という感覚が生まれるのに、何もないところでも、触覚が刺激されて「触っている」という感覚が生じている、これが気功です。

気功をやっている時には、いわば、脳の認知エラーが起きているといっても良いのです。

この脳の認知エラーを利用することで、私たちは実際に脳の情報を操作することが出来る。ありもしないものをあると感じることが実際に出来るのです。気功を利用することで、例えばまだ起きていない「未来」を私たちはありありと感じることが可能です。

本来、気功師とはそのような情報操作の達人のことでした。脳とは、即ち心の働きであり、身体のことでもあります。情報操作の術を身につける具体的な方法は心と身体を修練することです。その修練法が気功として伝えられてきて、今も残っているのです。

伝統的な気功師とは修練によって心と身体を自在に操ることが出来るスキルを身につけた人のことだったのです。イメージや身体の感覚を自在に操って自分だけではなく周りの人の心や身体にも自在に変化を起こすことが出来る人のことでした。

現代的な言葉を使って言えば、脳の認知エラーを利用した身体の感覚とイメージによる無意識の書き換えスキル、これが気功ということになります。

気とは何かをどれくらい理解して気功を扱うのかによって、その結果は全く異なります。気の力を科学的な観点から説明するのか、スピリチュアルな世界から捉えるのかによっても、それが自分や他者にもたらすインパクトは違ってきます。

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